皆さんは、人工知能に対してどのようなイメージを持っていますか?
ある人は、コンピュータをイメージし、またある人は、ロボットをイメージしたかもしれません。これは人工知能のイメージとして正しいでしょうか。答えは、正しいとも間違っているとも言える、というものになります。ここで、なぜ曖昧なのだと思われた方は鋭いですね。
さて、本記事では、このような人工知能について詳細なイメージが湧かない方に向けて、人工知能について他人に説明できるようになることを目標に、説明していきます。
人工知能ってよく聞くけど、あまりイメージが湧かないな〜
え!君、ロボットでしょ?なんでイメージ湧かないの?
あー!自分が人工知能で動いていることを完全に忘れてた!
まあいいや。
せっかくの機会だから、人工知能について、イメージが湧くように説明していくね。
知能ってなんだろう?
まず、知能とは何かを考えてみましょう。知能とは、知的な能力のことで、簡単な言葉で表せば「頭のよさ」でしょう。この、「頭のよさ」は、認識能力、予測能力、表現能力、理解力など、さまざまな力が総合的になって現れるものです。
私たちが知能を感じるのは、上で示したような力が感じられるときと解釈でき、もし、人工物に対してそれを感じたら、人工知能だと感じるのです。ルンバなどのロボットや、Siriなどの音声認識システムなどに人工知能を感じる人は多いのではないでしょうか。それが、人工知能と聞いたときのイメージとなるのです。
このように考えると、人工知能からコンピュータやロボットを連想することは間違いではありませんね。
人工知能(AI)とは?
先に断言しておきます。人工知能の定義は、人により異なり、絶対にこれが正解と言うものはありません。
ただし、大まかにいうなら、「機械で知的な機能を実現する技術」になると思います。
多くの専門家が、自分の考える人工知能の定義を述べているので、それを以下の表に示しました。
この議論における焦点は、人工知能に、機械(メカ)、心などを含めるか、そして、人間と同等レベルの知能を求めるか、といったところでしょう。
ちなみに、私が考える人工知能は、「人間と同レベルの知能、人間のような感情や心を持つ人工的に作られた知能」です。
以下の表を見ながら、自分がイメージする人工知能の定義に近いものはありますか?探してみてください。
専門家 (所属) | 定義 |
---|---|
中島 秀之 (公立はこだて未来大学学長) | 人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である |
西田 豊明 (京都大学大学院情報学研究科教授) | 「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である |
溝口 理一郎 (北陸先端科学技術大学院大学教授) | 人工的につくった知的な振る舞いをするもの(システム)である |
長尾 真 (京都大学名誉教授 前国立国会図書館長) | 人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである |
堀 浩一 (東京大学大学院工学系研究科教授) | 人工的につくる新しい知能の世界である |
浅田 稔 (大阪大学大学院工学研究科教授) | 知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない |
松原 仁 (公立はこだて未来大学教授) | 究極には人間と区別がつかない人工的な知能のこと |
武田 英明 (国立情報学研究所教授) | 人工的につくられた、知能を持つ実体。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である(中島氏と同じ) |
池上 高志 (東京大学大学院総合文化研究科教授) | 自然にわれわれがペットや人に接触するような、情動と冗談に満ちた相互作用を、物理法則に関係なく、あるいは逆らって、人工的につくり出せるシステムを、人工知能と定義する。 分析的にわかりたいのではなく、会話したり付き合うことで談話的にわかりたいと思うようなシステム。それが人工知能だ |
山口 高平 (慶應義塾大学理工学部教授) | 人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム |
栗原 聡 (電気通信大学大学院情報システム学研究科教授) | 工学的につくられる知能であるが、その知能のレベルは人を超えているものを想像している |
山川 宏 (ドワンゴ人工知能研究所所長) | 計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んでよいのではないかと思う |
松尾 豊 (東京大学大学院工業系研究科准教授) | 人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術 |
強いAI・弱いAI
上の説明から、人工知能は人により定義が異なることが理解できたと思います。これは、人工知能というワードが曖昧だからです。そこで、知能のレベルによって人工知能を2つに分類し、人間のような高度な知能を持つ人工知能を強いAI、どれかのタスクに特化した人工知能を弱いAIと呼ぶことがあります。
多くの人が人工知能と聞いて想像するのは、強いAIではないでしょうか?
強いAI
強いAIとは、一般的に、人間のように高度な知能を持つ人工知能のことを言います。汎用人工知能(Artificial General Intelligence: AGI)とも呼ばれます。人間の知能がそもそも高度なのか、とか、人間の知能は汎用ではない、などの議論が巻き起こることが多々あることから、汎用人工知能という言葉の意味を定義せずに多用するのは避けたいところです。ちゃんと定義した上で使用するようにしましょう。ちなみに、強いAIは、未だ実現できていません。
※当サイトの名前であるAGIRobotsは、汎用人工知能(AGI)とロボット(Robot)を合体させたものです。
弱いAI
弱いAIとは、一般的に、単一のタスクに特化した人工知能のことを言います。単一のタスクとは、例えば、囲碁、将棋、画像認識、音声認識、翻訳、などが挙げられます。単一のタスクであれば、すでに、人工知能の能力が人間の能力を超えているものもあります。
よって、汎用的でないというだけで、ある一部の能力は人間に優っているものが多々あるのが弱いAIです。
人工知能の実現アプローチ
上で、人工知能についてさまざまな専門家の意見を紹介しつつ、人工知能の定義の大まかな概要を紹介しました。そこでは、紹介しませんでしたが、知能を持っていることを証明することはできるのでしょうか?すなわち、私が人工知能の定義は「人間と同レベルの知能、人間のような感情や心を持つ人工的に作られた知能」だ!と主張したところで、人間と同レベルの知能だったり、人間のような感情や心を持つことをどうやって証明するのかと言う問題が起こります。極論、本当に人間と同レベルの知能、感情、心を持っているかはどうでもよく、人間から見て、人工知能が人間と同レベルの知能、感情、心を持っているかのように感じれば問題ないと言う結論に至ります(中国語の部屋問題として議論されている)。
このとき、人工知能の実現アプローチは、2つ考えられます。1つ目は、人間の手で逐一プログラミングする方法、2つ目は、学習機能を用いた方法です。前者はルールベース、後者は学習ベースと呼ばれます。
ルールベースの人工知能
ルールベースの人工知能の代表的なものに、エキスパートシステムがあります。エキスパートシステムとは、専門家の知識を人手でプログラム化することで、あたかも専門家と同じ知識を持って動作しているように感じられるシステムです。質問に対する回答が、専門家と同じシステムと考えてもらえればイメージしやすいでしょう。
使用する側からすると、システムが内容を理解しているかどうかは抜きにして、専門家と同じ知能を持っていると感じることができるので、代表的な人工知能の1つです。
しかし、ルールベースには限界があります。というのも、ルールをプログラムで表現できるようなものであれば、対応できますが、プログラムで表現が難しいものは対応できません。そこで、学習機能のみをプログラムで作成し、後は、学習に任せる手法が近年は用いられています。これが次に説明する学習ベースの人工知能です。
学習ベースの人工知能
学習ベースの人工知能の大表的なものに、ニューラルネットワークがあります。これは、生体の神経ネットワーク参考にして、構築されたもので、プログラムによりネットワーク構造と学習規則を用意しておけば、データから学習することができる優れものです。近年、世間で人工知能と呼ばれているプログラムの多くに使用されています。
多くの方が聞いたことがあるAlphaGoも、内部にニューラルネットワークを持っており、学習ベースの手法です。
人工知能は人間を超えられるか
人工知能は人間を超えられるでしょうか?ちょっと表現が曖昧ですね。むしろ、人工知能は、あらゆる能力(身体は含まない)において頂点に立つ人間を超えられるか?と言うべきかもしれませんね。以下に、私の考えを述べようと思います。
結論から言うと、それは可能だと思います。なぜかというと、未来のテクノロジーは完全に予測することが不可能であることと、テクノロジーは発展し続けることに留意すると、不可能だと主張する根拠がないからです。
ただし、これを正確に計測することは不可能でしょう。なんとなく、最近の人工知能は賢いなという感想を持っているうちに、気づいたら抜かされているのかもしれませんね。
この議論は、シンギュラリティ(技術的特異点)というテーマで議論されています。シンギュラリティはすぐに来るものではないので、当分は大丈夫です。
シンギュラリティ(技術的特異点)について以前、扱った記事↓
人工知能の未来
こういった話で、多くの人が想像するのは、人工知能が人間を超えたら、仕事が奪われたり支配されたりするというものでしょう。
支配というのは、人間の欲得に基づく部分が大半なので、人工知能が自ら人間を支配しようとすることは、ないだろうと考えます。ただし、悪い人が、人工知能を悪用して、人間を支配することはあるかもしれません。
コンピュータプログラムが悪用されてコンピュータウイルス作られるように、そして、コンピュータウイルスに対処するためにウイルス対策ソフトが作られるように、将来の人工知能の秩序は、悪い人工知能と良い人工知能の戦いにより実現されるのではないでしょうか。
そして、一般市民と接する人工知能は、あくまでも人間と共にあり、知能をアシストする関係である(べき)です。
人工知能により人間の知能の幅が広がることは、良いことが多いです。例えば、人工知能と共同による仕事の効率化、環境問題への対処、宇宙開発などのテクノロジーの急速な発達などが考えられます。
人工知能の未来は人間が作るものです。私たちが、人工知能の未来をしっかりと創造することが重要です。
おわりに
ここまでお読みいただいて、人工知能の理解は進みましたでしょうか?
人工知能について人に説明できる!となることを目標に、人工知能の表面的な部分に焦点を当てて説明してきました。
これを切掛に、人工知能について興味を持っていただけたら、とても幸いです。