Neuro-Symbolic AIって初めて聞いたんだけど、どんなAIのことなのかな?
という方に向けて、Neuro-Symbolic AIについて簡単に解説していきます。
Neuro-Symbolic AI
意味
Neuro-Symbolic AIとは、IBMが研究を進めいてる人工知能です。ブラックボックスになりがちなニューラルネットワークと、人間にとって理解しやすい記号的表現を融合させることで、解釈性が高い人工知能の実現を目指しています。
背景
みなさんご存知の通り、人工知能はこれまでの社会に大きな影響をもたらしています。
例えば、声から発話内容を認識し、適切な会話の生成やアクションの実行が可能な音声対話システム技術は、一般社会で使用可能なレベルに到達しつつあります。AlexaやGoogleアシスタントを持っている方であれば、これらの機器の音声認識精度や内容理解の精度の良さに驚いたことでしょう。私も、最初はとても驚きました。
他にも、自動運転やロボット技術などへの応用も進んでいます。
これは、主に深層学習技術の向上によって齎されました。深層学習は、膨大な数の人工ニューロンとデータを用いてパラメータをチューニングし、単純な構造でありながら複雑な知能を実現します。そのため、多くの研究者や企業が深層学習技術に飛びつき、研究や実用化を進めました。
しかし、深層学習には、ある問題が指摘されています。それは、解釈可能性が低いことです。深層学習で、どれだけ高い精度が出せても、なぜ、その精度が出せたのかを解析するのは大変です。
そのため、自動運転のように、判断を誤ると死者が出るようなタスクにおいては、人工知能の判断について人間が理解できることが望ましいです。
人間が理解できる人工知能というと、深層学習が主流になる前の人工知能、とりわけ、人手で逐一プログラムし、知能を実現しようとしていた昔の話という感じがしますね。いわゆる、記号表現が用いられていた頃のはなしです。
これら、古い人工知能技術と、新しい人工知能技術を合体させて、解釈可能性が高い人工知能を作ろうとしたのが、Neuro-Symbolic AIです。
目的
上で紹介したような、解釈性が低い問題は、高精度を叩き出すことができる深層学習を社会実装していくときの障壁となっています。そこで、人間にとって解釈性の高い記号的表現を融合させることで、深層学習の解釈性を向上させるというのが目的です。
まだ研究段階なので、今後の進展に注目したいです。
参考文献
[1] Zachary Susskind, Bryce Arden, Lizy K. John, Patrick Stockton and Eugene B. John. "Neuro-Symbolic AI: An Emerging Class of AI Workloads and their Characterization." CoRR, vol. abs/2109.06133, 2021.
[2] Artur d'Avila Garcez and Luis C. Lamb. "Neurosymbolic AI: The 3rd Wave." CoRR, Vol. abs/2012.05876, 2020.